PDFの基礎知識と、やってはいけない扱い方
PDFがどんな環境でも同じ見た目になる仕組みを解説し、黒く塗りつぶしても文字が読めてしまう危険、2種類のパスワード保護の違い、ファイルサイズが膨らむ原因と対処法を説明します。
なぜPDFはどこで開いても崩れないのか
Word の文書を別のパソコンで開くと、フォントが変わって改ページの位置がずれる。 誰もが一度は経験するこの問題を解決するために作られたのが PDF です。
Word ファイルは「この文章を明朝体で表示せよ」という指示を保存しています。 そのため、開いた側の環境に明朝体がなければ別のフォントで代用され、文字幅が変わって崩れます。
対して PDF は、「1ページ目の左から57.2ポイント、上から113.4ポイントの位置に、 この形の文字を置く」という結果を保存しています。 さらにフォントのデータそのものをファイルの中に埋め込みます。 受け取った側の環境に何がインストールされているかに関係なく、同じ見た目が再現される仕組みです。
この設計は「紙に印刷したものを電子化する」という発想から来ています。 PDF が Portable Document Format(持ち運べる文書形式)と名付けられ、 編集より閲覧と配布に向いているのは、そのためです。
黒く塗りつぶしても、文字は消えていない
これは知らないと事故につながる、最も重要な注意点です。
PDF は、文字の情報と見た目の情報を別々に持っています。 ビューアの注釈機能で黒い四角を重ねても、それは上に図形を1つ置いただけで、 下にある文字データは手つかずで残っています。
そのファイルを受け取った人が黒い四角を選んで削除すれば、隠したはずの文字がそのまま現れます。 範囲選択してコピーすれば、テキストとして取り出すこともできます。 実際に、行政機関や企業がこの方法で個人情報を漏らした事例が国内外で何度も起きています。
その部分を含むページごと除外するのが最も確実です。 PDF分割ツールで必要なページだけを抜き出せば、 抜き出さなかったページのデータは出力ファイルに一切残りません。 ページの一部だけを隠したい場合は、いったん画像化してから塗りつぶし、 画像をPDFに変換し直す方法が安全です。
パスワードには2種類ある
PDF のパスワードは、混同されやすい2種類が存在します。
| 種類 | 役割 | 解除しないと |
|---|---|---|
| ユーザーパスワード | ファイルを開くために必要 | そもそも中身を見られない |
| オーナーパスワード | 印刷・編集・コピーを制限する | 閲覧はできるが加工できない |
後者がやっかいで、開けるのに編集ツールで弾かれるという状況を生みます。 「パスワードを入力していないのに保護されていると言われる」場合は、 オーナーパスワードがかかっていると考えてください。 このサイトのPDFツールも含め、多くのツールは暗号化されたPDFを扱えません。 元の作成者に解除を依頼するか、Acrobat などで保護を削除してから使う必要があります。
ファイルサイズが膨らむ原因
PDF が異様に重くなるとき、原因はほぼ次の3つに絞られます。
1. 画像の解像度が高すぎる
最も多い原因です。スマートフォンで撮った写真は1枚あたり3〜5MB あり、 これを10枚まとめれば単純に50MB近くになります。 画面で見るだけなら、そこまでの解像度は不要です。 画像圧縮ツールで1枚500KB程度に落としてから PDF にすると、劇的に軽くなります。
2. スキャンした書類が画像として保存されている
複合機でスキャンした PDF は、中身が文字データではなく写真です。 そのため容量が大きく、文字検索もできません。 ページ数の多い書類をスキャンするときは、スキャナー側の設定で 解像度を200〜300dpi 程度に落とすと扱いやすくなります。
3. フォントが丸ごと埋め込まれている
前述のとおり PDF はフォントを埋め込みますが、 使った文字だけを埋め込む方式と、フォント全体を埋め込む方式があります。 日本語フォントは1万字を超える文字を含むため、 全体を埋め込むと数MB単位で増えます。作成ソフト側の設定で変更できる場合があります。
結合するときに失われるもの
複数のPDFを1つにまとめる作業は、ページの中身をそのまま引き継ぎます。 ただし、次の要素は失われることがあります。
- しおり(目次):文書ごとに紐づいているため、結合時に整合が取れなくなる
- 入力フォーム:同じ名前の項目が複数存在すると競合する
- 注釈の一部:ツールによって扱いが異なる
重要な書類を結合したときは、必ず結合後のファイルを開いて確認してください。 ページの内容とリンクは通常そのまま残ります。
ページサイズは揃えておく
PDF はページごとに異なるサイズを持てます。 A4 と A3 が混ざったファイルも作れますが、印刷すると用紙が混在して扱いにくくなります。
配布や提出を前提とするなら、結合する前にサイズを揃えておくほうが親切です。 向きがばらばらな場合は、PDFページ回転ツールで 先に直しておくと手戻りがありません。
まとめ
- PDF は「結果」を保存する形式なので、どこで開いても崩れない
- 黒塗りは隠したことにならない。ページごと除外するのが確実
- パスワードは2種類ある。開けるのに編集できないならオーナーパスワード
- 重い原因のほとんどは画像。先に圧縮してから PDF にする
- 結合後は必ず開いて確認する