給与明細の読み方|額面と手取りの差はどこへ消えるのか
額面と手取りの差を生む健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険・所得税・住民税の6項目を1つずつ解説します。新入社員2年目に手取りが減る理由、40歳で負担が増える理由も。
額面と手取りの差は、だいたい2割
給与明細には大きく3つの区分があります。 働いた対価である支給、そこから引かれる控除、 そして差し引き後に振り込まれる差引支給額です。 この差引支給額が、いわゆる手取りです。
一般に手取りは額面の75〜85%になります。年収が上がるほど税率が高くなるため、 手取りの割合は下がっていきます。年収300万円なら約80%、年収500万円なら約78%、 年収1,000万円なら約73%が目安です。
引かれている6つのお金
控除欄に並ぶ項目は、性質の違う2グループに分かれます。 社会保険料と税金です。
社会保険料(4項目)
保険であって税金ではありません。将来や万一のときに給付として戻ってくる性質のお金です。 健康保険・介護保険・厚生年金は会社が半分を負担しています。 明細に載っている金額と同額を、会社もあなたのために払っています。
| 項目 | 本人負担の目安 | 何のためのお金か |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 約5% | 病院の窓口負担が3割で済むのはこれのおかげ。高額療養費制度も含まれる |
| 介護保険料 | 約0.8% | 40歳から64歳のみ。介護サービスを支える |
| 厚生年金保険料 | 9.15% | 老後の年金に加え、障害年金・遺族年金も含む。全国一律 |
| 雇用保険料 | 約0.55% | 失業給付、育児休業給付、教育訓練給付の財源 |
税金(2項目)
| 項目 | 税率 | 特徴 |
|---|---|---|
| 所得税 | 5〜45% | その年の所得にかかる国税。稼ぐほど税率が上がる超過累進課税 |
| 住民税 | 約10% | 前年の所得にかかる地方税。翌年6月から天引きされる |
「税率が上がると手取りが減る」は誤解
所得税は超過累進課税です。課税所得が195万円を超えると税率が10%になりますが、 全額に10%がかかるわけではありません。 195万円までの部分は5%のまま、超えた部分にだけ10%がかかります。
そのため、区分の境目をまたいだせいで手取りが減ることは起こりません。 「昇給したら手取りが減った」という話が出るとすれば、それは税率ではなく、 社会保険料の標準報酬月額の等級が上がったか、扶養から外れたかのどちらかです。
手取りが変わる3つのタイミング
入社2年目の6月:1〜2万円減る
最も多くの人が驚くのがこれです。住民税は前年の所得にかかるため、 働き始めた年は前年の所得がなく、住民税がゼロです。 そして2年目の6月から、1年目の所得に対する住民税が一気に引かれ始めます。
1年目と同じ感覚で生活していると、手取りが減って家計が狂います。 1年目のうちに、2年目からは月1〜2万円減ると想定しておくのが賢明です。
40歳の誕生月:約0.8%減る
40歳になると介護保険料の負担が始まります。 年収500万円なら年間で約4万円、月におよそ3,000円の負担増です。 65歳からは給与天引きではなく、年金からの天引きに切り替わります。
4〜6月の残業が多かった年の9月
社会保険料は毎月の給与から個別に計算されているわけではなく、 4月・5月・6月の平均額をもとに等級を決め、 その等級の保険料を9月から1年間適用します。定時決定と呼ばれる仕組みです。
つまりこの3か月に残業が集中すると、その年の9月から1年間、 保険料が高いままになります。 ただし保険料が高いということは将来の年金額も増えるということなので、 一概に損とは言えません。
年収の壁は税金だけの話ではない
2025年(令和7年)分から基礎控除と給与所得控除が引き上げられ、 給与収入がおよそ160万円までは所得税がかからなくなりました。 いわゆる「103万円の壁」が動いたかたちです。
ただし、扶養の範囲で働く人にとって影響が大きいのは税金より社会保険です。
| 目安 | 何が起きるか | 影響 |
|---|---|---|
| 約100万円 | 住民税がかかり始める | 小さい |
| 約160万円 | 所得税がかかり始める | 小さい |
| 106万円・130万円 | 自分で社会保険に入る必要が生じる | 大きい |
税金は超えた分に少しかかるだけですが、社会保険は加入した瞬間に 年収の約15%が引かれ始めます。手取りが逆転する可能性があるのはこちらです。 条件は勤務先の規模や労働時間によって変わるため、勤務先に確認してください。
賞与の手取りは月給より少し多い
ボーナスからも社会保険料と所得税は引かれますが、 住民税は引かれません。 住民税は月々の給与から1年分を12回に分けて徴収する仕組みだからです。 そのため賞与の手取り率は月給よりやや高く、おおむね額面の80〜85%になります。
まとめ
- 手取りは額面の75〜85%。年収が上がるほど割合は下がる
- 社会保険料は税金ではなく、会社が半分負担している
- 税率の区分をまたいでも手取りは減らない
- 2年目の6月に住民税が始まる。ここを見落とすと家計が狂う
- 扶養の範囲で働くなら、税金より社会保険の壁を見る
自分の額面での具体的な金額は、 手取り計算ツールで内訳ごとに確認できます。
本記事は一般的な仕組みの解説です。保険料率は年度ごとに改定され、 加入している健康保険組合によっても異なります。正確な金額は給与明細と、 勤務先の担当部署でご確認ください。